「感染症について」
こだまクリニック 児玉和也医師 
 
中国に端を発した新型ウイルスによる急性肺炎が短期間に多くの国に広がって新聞報道をにぎわせています。ウイルスには自然宿主というものがありますが、自然の中で穏やかに暮らしていたウイルスが開発によって行き場を失った動物たちとともに人間社会に入ってくると猛威をふるうと考えられています。

 何年か前には森林開発に伴ってニパウイルスが東南アジアでひとつの村を全滅させたという報道がありました。有史以来人類は感染症との戦いを続けています。ペニシリンに代表される抗生物質の開発によって一時勝利したかに見えたのもつかの間、糖尿病などの生活習慣病が広がるにつれて肺結核の発症が増加に転じました。これは昔から体に住み着いていた弱毒菌が抵抗力の低下によって再び増殖して発症する日和見(ひよりみ)感染といわれるものです。

 抗生物質の乱用が一因ともいわれたメチシリン耐性ブドウ球菌などの院内感染がマスコミに取り上げられたのも最近のことでした。
 交通手段の発達により世界の国々との距離が相対的に近くなり、アフリカや東南アジアで感染し、帰国後に発症する赤痢やマラリアなども急増しています。エイズウイルスがあっという間に世界に広がったのも交通手段の発達に関係があります。

 地球温暖化に伴って蚊などの媒介動物の生息範囲が広がり、これまではロシアでみられていたウイルス性脳炎の発生も確認されております。近い将来には、日本でのマラリアの発生を危惧する報告も見られます。これらは新興感染症といわれ、二十一世紀にはますます感染症対策が重要になると考えられております。私たちの皮膚や口の中、お腹の中には非常に多くの細菌、真菌が住んでいて正常細菌叢(そう)を形成しています。耐性病原体の出現を押さえるためにも抗生物質や抗ウイルス薬は必要最小限に使うよう心掛けたいものです。
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